13Apr
はじめに、でプロ入り以来30年以上着続けたユニフォームからスーツに着替え12球団のキャンプをはじめて自分の目で見て回ったエピソード。まさに百聞は一見にしかず。
落合前監督の『采配』は原稿の段階で色々読ませてもらったそうで、それを受けて書かれている部分もたくさん。
投手会の夜って素敵な響き。
ここでは最後の投手会でサインが所狭しと書かれたゴールドのユニをもらった話とか、落合前監督がいつも軍資金だしてくれた話とか、投手たちから森さんへ言えなかったこと聞きたかったことを言ってしまおうという流れで山井がうれしそうな顔をする話とか。良い話だなあ。
山井と岩瀬の完全試合の話が詳しく書かれていて、「山井頑張ったなあ。岩瀬は本当に凄いなあ。」と思えて、それを決断したコーチと監督の姿を思うと泣ける。
最初の年のキャンプで朝まで飲みながらコーチがそれぞれの所属していたチームで日本一になった強かったチームのことを連日語り明かしたりとか、8年の元はこういうところにもあるんですよね。
「ドミニカってなに?」と聞き返されるくらいの薄い関係だったドミニカへ毎年行って選手を連れてきたり連れて行ったりした話も、それまでの人の繋がりとかで当初の想像よりもずっと早くその関係になることができたとか、球団のバックアップがあってこそ毎年選手を連れてくることができたこととか、ネルソンとの出会いとか。そこに貫かれているのは信用される付き合い方。
2007CS2で良く話題になる小笠原先発の話も、内側からそれを語ってもらうと、改めて凄いことを普通にできる組織だったんだなあと感動する。今年以降はこういう風に状況を見て先発の順番を入れ替えたり、ジャンケンしたり、家族にも秘密にしていたりという事も無くなるのね。
「よう我慢しますね。たいしたもんだ」
「バッカ野郎。オレはおまえより本当は短気でなあ、すごいんだぞ」
「シゲ、オレもこらえるのに大変なときはあるんだよ。でもカメラの前では決して表情を変えてはいけない。敵にこちらの心の動きを知られたら負けなんだよ。相手に有利な情報を漏らさないように必死にこらえているよ」
「たくさんのトラブルの種を、表沙汰になる前になんとか収めてきた」ってのは表沙汰になったのに関わってたエピソードを思い出すに、色々あったんでしょうね。
北京から帰ってきた岩瀬とのやり取りも当時を思いだして泣ける。
2011年9月22日の出来事も当日のざらざらした気持ちと、後でこのエピソードが語られて感激した時を思い出すなあ。
谷繁さんと作り上げた関係とか、コーチ陣との関係とか、とにかく色んなエピソードが詰め込まれていて、読む度にいろいろ得るものがありそうな一冊。
中日ドラゴンズの8年間を身近に応援していた人も、ちょっと興味があった人もそれぞれ楽しめるところがあるんじゃないかな。
思い出の引き出しが多い方が心を揺さぶられると思うけど、目標を掲げてそれを達成するための組織をどう作り継続していったのか、日々心掛けていたのはどんなことかってのは基本にできるんじゃないかな。
ユニフォームを脱いですぐに、森さんの愛情がたっぷり詰まったこの本を世に出してくれたことが、とってもありがたい。
だからプロ野球は面白い 中日・森繁和元ヘッドコーチが初めて明かす 「参謀」—落合博満は何が違うのか:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32240
森繁和(前中日ヘッドコーチ)が明かす「負けない〝オレ流軍団〟の作り方」 問題投手だった吉見&浅尾、ドミニカ開拓秘話…
落合を支えた参謀が初めて語った!:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32428
『参謀』『天才たちのプロ野球』出版記念スペシャル対談
森繁和×二宮清純<前編>「今だから話せるオレ竜の真実」:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32434
森繁和×二宮清純<後編>「バッターは飛ばないボールで工夫せよ!」:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32563
参謀―落合監督を支えた右腕の「見守る力」 |
[目次] 015 序章 投手会の夜 025 第一章 なぜしぶといチームは完成したのか 026 ・完全試合の山井を交代させた組織の強さ 036 ・指導者の顔色をうかがうような若手を作ってはならない 048 ・監督のアイディアは受け売りせず自分なりに考えて選手に伝えた 054 ・対戦相手の気持ちになって戦略を練る 062 ・飲みながら朝まで続けた昔話に成功のヒントがあった 069 第二章 教えるより考えさせるコーチ術 070 ・長時間放っておけば、伸びる投手は自分で考えだす 077 ・「こうやれ!」ではなく、「こういうやり方もあるよ」がよい 088 ・浅尾が今あるのは、周囲が厳しい組織だったから 095 ・吉見こそ「長所を伸ばせ!」の成功例だ 100 ・ドミニカで感じた、分け隔てなく面倒を見ることの大切さ 111 第三章 落合博満監督の凄さ 112 ・任せて、信じて、責任を取る 123 ・調子が落ちてきそうなときこそ、より冷静になる 128 ・チームの約束を決めたらぶれない、決して特例を作らない 139 ・自分がいなくなる将来のことも若手のために常に考える 146 ・チームには必ず波がある。苦しい時こそ大局的に考える 158 ・監督の仕事はコーチを観察し、正しく評価すること 164 ・現場の待遇をよくするために、あらゆる努力を惜しまない 169 第四章 参謀の心得 170 ・考え方は教えられない。答えは自分で見つけさせるしかない 176 ・一度現場をふませると、その選手がやる気になる言い方がわかる 184 ・リーダーのアイディアを実現することこそ「参謀」の一番の仕事 195 ・チームの要に対しては、敬意を持った上で毅然とした言葉を使う 199 ・組織図をシンプルに描ける組織が、いざというとき強い 205 ・監督の耳に入れないで済ますことは多いほどよい 210 ・自分が任されているなら、部下にもしっかり任せて責任を取る 215 終章 選手への愛情は決してなくさない |